ふたこわたるより バックナンバー
日時 | タイトル |
---|---|
2016/02/23(火) 20:00 | ふたこわたるより 【アリとキリギリスの話、オペレッタになりました。3/27公演】 |
○○さん、こんにちは。
ふたこです。
約1年前、アリとキリギリスのお話の、僕なりの解釈のものを書きました。
そうしたらソプラノ歌手の豊田かおりさんの目に留まり、
あっという間にオペレッタになることが決まりました。
この物語を原案にした公演が3/27に名古屋であります。
(すみません、その前に予定していた岡崎公演は都合でなくなった模様です)
ちなみにこれを原案にして脚本を書いてくださったのは、
友人の守屋 文香さん。作曲はなかむらたかしさんです。
僕も当日は2公演とも現地にいる予定です。
みなさんぜひご一緒しましょう。
チケットは5/Rギャラリーさんへ直接お申込みいただくか、Dream Music Factory(かおりさんの事務所)までメッセージください。
5/R
http://www.five-r.jp/hall/view/957(午前の部)
http://www.five-r.jp/hall/view/958(午後の部)
Dream Music Factory
http://akazukin423.wix.com/dream-music-factory
**********
元の記事はこちら:
アリとキリギリスの話について、なんだかアリになるのが正しいことのように
思わされちゃう罠があるよね、という記事を見かけました。
それについては、ほんとそうだなって僕は思います。
あの終わり方はちょっと好きじゃない。
一方、この話は近年では、キリギリスがアリに助けられるバージョンもあります。
あるとき僕はそれを聞いて、それはそれで「違〜う!!」と感じたのを覚えています。
それは生命に対する侮辱じゃないかと。
そこで一度、僕バージョンを書きかけたことがあるの。
そのときは未完成だったんだけれど、
せっかくなのでこの機会に最後まで書いてみました。
***ここから***
キリギリスは夏に美しい音楽を奏でます。それはほんとうに幸せなことなのです。
アリはそんな音楽を聴きつつも、せっせと食べ物を集めています。
心優しいアリはある時、キリギリスに尋ねてみました。
「キリギリスさん、冬に備えないとまずいんじゃないですか?
今働かないと冬を越せませんよ。」
だってアリはキリギリスのことがほんとうに心配なんですもの。
キリギリスはこう答えます。
「アリさん、僕はね、冬を越すために生きているんじゃないんだよ。
僕はね、この暑い盛りに太陽の眩しさを感じ、草の香りを嗅いで、
愛しい人のことを想いながら音楽を奏でるのが最高に幸せなんだ。
この最高の季節を感じながら奏でる音楽を、
うっとりと聴いてくれる彼女の顔を見るのが最高に幸せなんだ。
僕はそのために生きていると思う。
アリさん、君はなんのために生きているの?」
アリはそんなことを考えたこともなく働いていたので、
何も答えられませんでした。
もやもやした気持ちを抱えながら、アリは仕事に戻りました。
***
季節が巡り、寒さが日に日に増してきたとき、
地面に横たわるキリギリスをアリが見かけました。
キリギリスは弱っていて、もう間もなく命が尽きようとしているのでした。
アリは近づいて、キリギリスに思いやりに満ちた視線を送りながらもう一度尋ねました。
「キリギリスさん、このままじゃ死んじゃうよ。
本当にこれで良かったの?
もしよかったら、僕のうちに来たら食べるものも
少しは分けられると思うよ。」
キリギリスは答えました。
「アリさん、僕はやはり冬は越せない。
キリギリスに生まれるというのはそういうことなんだ。
でもね、冬を越せないなんて、そんなことは全く問題ない。
だって僕はほんとうに生きたい人生を生きたんだから。
来年になれば、僕の子供達がまた、世界の美しさを歌にしてくれるはずだ。
僕はもうすぐ死ぬけれど、今、こころから幸せだよ。
アリさん、君はなんのために生きているの?」
***
アリは夏のあの日から、自分の心にずっとあの問いを抱えてきました。
そしてこう答えました。
「キリギリスさん、実は夏のあの時は、僕は自分がわからなくなったんだ。
なんのために生きているんだろうって。
なんでこんなにあくせくはたらいているんだろうって。
でもね、僕は、今幸せなんだ。はっきりとそれがわかる。
僕は自分の家族と一緒に過ごす時間がとても幸せで、
そんな幸せがずっと続いてくれたらいいと思っている。
食べ物を集めてヘトヘトになって帰っても、みんなで食卓を囲んで、
美味しそうに食事をする家族の笑顔を見ていると、
たまらない愛おしさが溢れてくる。
あの夏も、この秋も、これからくる冬も家族と一緒に過ごして、
春を一緒に喜んで、また夏を迎えて・・・それこそが僕の幸せ。
ほんとうにこころから愛している家族と一緒に生きて行くためなら、
僕は喜んで働けるってわかったんだ。」
キリギリスはそれを聞いて答えました。
「そうか。それはそれで素敵な人生だなって思う。ほんとうに。」
アリは続けます。
「あの夏の日、僕はすでに自分の望む人生を生きていたんだ。
でもそのことに気づいていなかった。
キリギリスさんと話して、初めて自分のこころに問いかけるようになって、
そして今はっきりと分かるようになった。
わかった方が、前よりももっと、自分の幸せを感じられるようになったんだよ。
だからキリギリスさんにはほんとうに感謝している。」
アリの目からは涙がこぼれていました。
「これでお別れするなんて悲しい。でも生きていたら死があり別れがある。
それは愛する家族との間でも同じこと。
だとしたら、その別れをこころから悲しむことも
僕に与えられた愛の形なんじゃないかと今は思える。
こんな風に感じられるようになったのは、
みんなキリギリスさんのおかげだよ。
ほんとうにありがとう。」
アリの涙に霞んだ瞳には、
自分の人生を生ききって今穏やかに眠るキリギリスの顔が映っていました。
*****おしまい*****
いかがでしたか。
もしよかったらオペレッタの公演会場でお会いしましょう。
********************
ふたこわたる公式メールマガジン
kazetsukai@japan-ex.jp
配信停止はこちらから
(解除URL)
バックナンバー
http://greek-ex.jp/bkn20710/futako01/
ふたこです。
約1年前、アリとキリギリスのお話の、僕なりの解釈のものを書きました。
そうしたらソプラノ歌手の豊田かおりさんの目に留まり、
あっという間にオペレッタになることが決まりました。
この物語を原案にした公演が3/27に名古屋であります。
(すみません、その前に予定していた岡崎公演は都合でなくなった模様です)
ちなみにこれを原案にして脚本を書いてくださったのは、
友人の守屋 文香さん。作曲はなかむらたかしさんです。
僕も当日は2公演とも現地にいる予定です。
みなさんぜひご一緒しましょう。
チケットは5/Rギャラリーさんへ直接お申込みいただくか、Dream Music Factory(かおりさんの事務所)までメッセージください。
5/R
http://www.five-r.jp/hall/view/957(午前の部)
http://www.five-r.jp/hall/view/958(午後の部)
Dream Music Factory
http://akazukin423.wix.com/dream-music-factory
**********
元の記事はこちら:
アリとキリギリスの話について、なんだかアリになるのが正しいことのように
思わされちゃう罠があるよね、という記事を見かけました。
それについては、ほんとそうだなって僕は思います。
あの終わり方はちょっと好きじゃない。
一方、この話は近年では、キリギリスがアリに助けられるバージョンもあります。
あるとき僕はそれを聞いて、それはそれで「違〜う!!」と感じたのを覚えています。
それは生命に対する侮辱じゃないかと。
そこで一度、僕バージョンを書きかけたことがあるの。
そのときは未完成だったんだけれど、
せっかくなのでこの機会に最後まで書いてみました。
***ここから***
キリギリスは夏に美しい音楽を奏でます。それはほんとうに幸せなことなのです。
アリはそんな音楽を聴きつつも、せっせと食べ物を集めています。
心優しいアリはある時、キリギリスに尋ねてみました。
「キリギリスさん、冬に備えないとまずいんじゃないですか?
今働かないと冬を越せませんよ。」
だってアリはキリギリスのことがほんとうに心配なんですもの。
キリギリスはこう答えます。
「アリさん、僕はね、冬を越すために生きているんじゃないんだよ。
僕はね、この暑い盛りに太陽の眩しさを感じ、草の香りを嗅いで、
愛しい人のことを想いながら音楽を奏でるのが最高に幸せなんだ。
この最高の季節を感じながら奏でる音楽を、
うっとりと聴いてくれる彼女の顔を見るのが最高に幸せなんだ。
僕はそのために生きていると思う。
アリさん、君はなんのために生きているの?」
アリはそんなことを考えたこともなく働いていたので、
何も答えられませんでした。
もやもやした気持ちを抱えながら、アリは仕事に戻りました。
***
季節が巡り、寒さが日に日に増してきたとき、
地面に横たわるキリギリスをアリが見かけました。
キリギリスは弱っていて、もう間もなく命が尽きようとしているのでした。
アリは近づいて、キリギリスに思いやりに満ちた視線を送りながらもう一度尋ねました。
「キリギリスさん、このままじゃ死んじゃうよ。
本当にこれで良かったの?
もしよかったら、僕のうちに来たら食べるものも
少しは分けられると思うよ。」
キリギリスは答えました。
「アリさん、僕はやはり冬は越せない。
キリギリスに生まれるというのはそういうことなんだ。
でもね、冬を越せないなんて、そんなことは全く問題ない。
だって僕はほんとうに生きたい人生を生きたんだから。
来年になれば、僕の子供達がまた、世界の美しさを歌にしてくれるはずだ。
僕はもうすぐ死ぬけれど、今、こころから幸せだよ。
アリさん、君はなんのために生きているの?」
***
アリは夏のあの日から、自分の心にずっとあの問いを抱えてきました。
そしてこう答えました。
「キリギリスさん、実は夏のあの時は、僕は自分がわからなくなったんだ。
なんのために生きているんだろうって。
なんでこんなにあくせくはたらいているんだろうって。
でもね、僕は、今幸せなんだ。はっきりとそれがわかる。
僕は自分の家族と一緒に過ごす時間がとても幸せで、
そんな幸せがずっと続いてくれたらいいと思っている。
食べ物を集めてヘトヘトになって帰っても、みんなで食卓を囲んで、
美味しそうに食事をする家族の笑顔を見ていると、
たまらない愛おしさが溢れてくる。
あの夏も、この秋も、これからくる冬も家族と一緒に過ごして、
春を一緒に喜んで、また夏を迎えて・・・それこそが僕の幸せ。
ほんとうにこころから愛している家族と一緒に生きて行くためなら、
僕は喜んで働けるってわかったんだ。」
キリギリスはそれを聞いて答えました。
「そうか。それはそれで素敵な人生だなって思う。ほんとうに。」
アリは続けます。
「あの夏の日、僕はすでに自分の望む人生を生きていたんだ。
でもそのことに気づいていなかった。
キリギリスさんと話して、初めて自分のこころに問いかけるようになって、
そして今はっきりと分かるようになった。
わかった方が、前よりももっと、自分の幸せを感じられるようになったんだよ。
だからキリギリスさんにはほんとうに感謝している。」
アリの目からは涙がこぼれていました。
「これでお別れするなんて悲しい。でも生きていたら死があり別れがある。
それは愛する家族との間でも同じこと。
だとしたら、その別れをこころから悲しむことも
僕に与えられた愛の形なんじゃないかと今は思える。
こんな風に感じられるようになったのは、
みんなキリギリスさんのおかげだよ。
ほんとうにありがとう。」
アリの涙に霞んだ瞳には、
自分の人生を生ききって今穏やかに眠るキリギリスの顔が映っていました。
*****おしまい*****
いかがでしたか。
もしよかったらオペレッタの公演会場でお会いしましょう。
********************
ふたこわたる公式メールマガジン
kazetsukai@japan-ex.jp
配信停止はこちらから
(解除URL)
バックナンバー
http://greek-ex.jp/bkn20710/futako01/